レアメタルとレアアースの違い
経済産業省の定義と、対象鉱種は31か34か
「レアメタル」と「レアアース」。ニュースでは並べて使われることが多く、二つの違う物を指しているように見えます。しかし実際には、この二つは並列の関係ではありません。片方がもう片方を含んでいます。
この記事では、経済産業省の定義の原文にあたりながら、金属の分類のなかでレアメタルとレアアースがどこに位置しているのかを整理します。あわせて、多くの解説で使われている「31鉱種」という数字が、現在の公表資料と食い違っている点にも触れます。
金属はどう分類されているのか
個別の話に入る前に、全体の地図を先に置きます。産業で使われる金属は、大きく次のように分けられています。
金属の大まかな区分
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| 区分 | 特徴 | 例 |
|---|---|---|
| ベースメタル | 埋蔵量・産出量ともに多く、精錬が比較的簡単 | 鉄、アルミ、銅 |
| 貴金属 | 装飾・資産としても扱われる | 金、銀 |
| レアメタル | 産出量が少ない、または抽出がむずかしい | チタン、コバルト、ニッケル |
| └ レアアース | レアメタルの一部にあたる17元素 | ネオジム、ジスプロシウム |
資源エネルギー庁の解説をもとに整理しました。同庁は、埋蔵量・産出量ともに多く精錬が比較的簡単な鉄・アルミ・銅などをベースメタル、産出量が少なかったり抽出がむずかしい希少な金属をレアメタルと呼び、さらにレアメタルの一部である17元素をレアアースと呼ぶ、と説明しています。
表の最後の行の「└」が、この記事で一番伝えたいことです。レアアースはレアメタルと並ぶ別のグループではなく、レアメタルの内側にあります。
レアメタルとは何か——経済産業省の定義
日本でのレアメタルの定義は、鉱業審議会が定めたものが使われています。経済産業省の資料には、次のように書かれています。
「地球上の存在量が稀であるか、技術的・経済的な理由で抽出困難な金属」のうち、工業需要が現に存在する(今後見込まれる)ため、安定供給の確保が政策的に重要であるもの
この一文には、見落とされやすい点が二つあります。
一つめは、「存在量が稀である」ことが条件のすべてではないという点です。定義は「存在量が稀であるか、技術的・経済的な理由で抽出困難な金属」となっており、二つの条件が「または」で結ばれています。つまり、地球上にそれなりの量があっても、取り出すのが難しければレアメタルに含まれます。「レア=埋蔵量が少ない」という理解だけでは、定義の半分しか見ていないことになります。
二つめは、「安定供給の確保が政策的に重要である」という条件が入っている点です。これは物質そのものの性質ではなく、政策上の判断です。産業技術総合研究所も、レアメタルには明確な定義がなく、どの金属がレアメタルに分類されるかは国や時代によって変わると説明しています。
この「時代によって変わる」という性質が、後半で扱う鉱種数の話につながります。
レアアースは、レアメタルの一部
レアアース(希土類)は、スカンジウム、イットリウムと、ランタンからルテチウムまでの15元素(ランタノイド)を合わせた17元素の総称です。資源エネルギー庁も、レアアースを「レアメタルの一種で17種類の元素」と書いています。
レアメタルの対象鉱種のなかで、レアアースは17元素をまとめて1鉱種として数えられています。化学的性質がよく似ていて、鉱石のなかで混ざり合って産出し、分離が難しいためです。この「1鉱種として扱う」という数え方が、後半の数字の話でも効いてきます。
レアアースそのものの詳細は、当サイトの別記事で扱っています。
基礎・技術解説「レアじゃなくなったら名前はどうなる?」レアアースの基本と、日本がリサイクルに必死になる本当の理由名前の由来と、「レア」が埋蔵量ではなく精製の難しさを指している理由を解説しています。 基礎・技術解説レアアース全17元素一覧と用途解説|現代テクノロジーを支える「産業のビタミン」17元素それぞれの名前、軽レアアースと重レアアースの分類、具体的な使用製品をまとめています。違いを一言で言うと
ここまでを整理します。
レアメタルとレアアースの関係
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| レアメタル | レアアース | |
|---|---|---|
| 関係 | 上位の区分 | レアメタルに含まれる |
| 範囲 | リチウム、チタン、コバルト、ニッケル、タングステンなど多数 | 17元素 |
| 数え方 | 鉱種単位で数える | 17元素まとめて1鉱種 |
| 定義の主体 | 鉱業審議会(経済産業省) | 元素の種類として確定 |
「レアメタルとレアアース、どちらですか」という問いは、「果物とりんご、どちらですか」と聞くのに似ています。レアアースの話をしているとき、それは同時にレアメタルの話でもあります。
レアメタルは何に使われているのか
レアアース以外のレアメタルが何に使われているかは、あまり知られていません。経済産業省の資料では、用途別に次のように整理されています。
レアメタルの主な用途
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| 用途 | 主に使われる鉱種 |
|---|---|
| 特殊鋼 | ニッケル、クロム、タングステン、ニオブ など |
| 電子部品(IC、半導体、接点など) | タンタル、ガリウム など |
| 超硬工具 | タングステン、バナジウム など |
| 希土類磁石 | レアアース(ネオジム、プラセオジム、テルビウム)など |
| 排気ガス触媒 | 白金族(プラチナ、パラジウム、ロジウム)など |
| 展伸材 | チタン など |
| リチウムイオン電池 | リチウム、コバルト、ニッケル など |
出典:資源エネルギー庁資源・燃料部「2050年カーボンニュートラル社会実現に向けた鉱物資源政策」(2021年2月15日)p5をもとに整理しました。
レアアースが担っているのは、この表のうち「希土類磁石」の欄です。レアアースは、レアメタル全体から見れば用途のひとつにすぎません。ステンレス鋼に欠かせないニッケルやクロム、超硬工具のタングステン、電池のリチウムやコバルトは、いずれもレアアースではないレアメタルです。
供給面では、レアメタルに共通する厄介な性質があります。経済産業省は、レアメタルには他の鉱石の副産物として生産されるものが多く、主生産物の供給に左右されるため、副産物の需要動向に応じた供給を行うことが難しい、と指摘しています。同省の資料では、インジウム、ガリウム、バナジウム、モリブデン、ゲルマニウム、コバルト、セレン、テルル、ビスマス、レニウムが副産物型の例として挙げられています。需要が増えても、それだけでは増産できない鉱種が相当数あるということです。
レアメタルはいくつあるのか——31鉱種か、34鉱種か
ここからが、この記事でもっとも注意して書いた部分です。
レアメタルの解説を読むと、ほとんどが「経済産業省の定義では31鉱種が対象」と書いています。この数字自体は、確かに経済産業省の資料に書かれていたものです。2014年5月の同省非鉄金属課・鉱物資源課の資料には、鉱業審議会がレアメタルを定義し「現在、31種類が対象」と明記されています。
しかし、現在の公表資料はこの数字を使っていません。
2020年7月に公開された資源エネルギー庁の解説では、レアメタルには34種類の鉱種があると書かれています。さらに2021年2月の同庁の審議会資料では、レアメタル備蓄の対象範囲として「レアメタル34鉱種(55元素)」と記され、鉱種名がすべて列挙されています。
現在の対象鉱種(34鉱種55元素)
リチウム/ベリリウム/ホウ素/チタン/バナジウム/クロム/マンガン/コバルト/ニッケル/ガリウム/ゲルマニウム/セレン/ルビジウム/ストロンチウム/ジルコニウム/ニオブ/モリブデン/インジウム/アンチモン/テルル/セシウム/バリウム/ハフニウム/タンタル/タングステン/レニウム/タリウム/ビスマス/希土類(レアアース)/白金族/グラファイト/フッ素/マグネシウム/シリコン
出典:資源エネルギー庁資源・燃料部「2050年カーボンニュートラル社会実現に向けた鉱物資源政策」(2021年2月15日)p32。同資料はこれをJOGMECによる国家備蓄の対象範囲として記載しています。
鉱種数が31から34へ、元素数が47から55へ変わっています。鉱種は3つしか増えていないのに、元素は8つ増えている点が目を引きます。
この差は、二つの変化が同時に起きたと考えると説明がつきます。ひとつは、現在の一覧でグラファイト、フッ素、マグネシウム、シリコンの4鉱種が対象に入っていること。もうひとつは、白金族が1鉱種としてまとめて数えられていることです。白金族はプラチナ、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウムの6元素を含みます。
ただし、「31鉱種から34鉱種へこう変更した」と経緯を説明した公表資料は見つけられませんでした。上の説明は、二つの時点の公表内容を突き合わせた推定です。この点は末尾にも記しています。
なお、追加された4鉱種は、2014年の時点でもまったく視野の外にあったわけではありません。同じ2014年の資料には、主生産物として生産されるレアメタルの例のなかに、シリコン、フッ素、マグネシウム、グラファイトの名前がすでに出ています。認識はされていたが、当時の対象には入っていなかったということになります。
変更の時期は、2014年5月時点で31種類、2020年7月時点で34鉱種という記述から、この間に更新されたと考えられます。
解説記事の多くが31鉱種と書き続けているのは、この更新を反映していないためと見られます。数字そのものが大きく意味を変えるわけではありませんが、資料を確認する側からすると、31で探すか34で探すかで行き着く先が変わります。
この記事で確認できなかったこと
当サイトでは、裏づけが取れなかった事項を記事の末尾に記しています。
- 31鉱種から34鉱種への変更の経緯と時期。変更を告知した公表資料を見つけられませんでした。本文の説明は、2014年と2021年の公表内容を突き合わせた推定です。
- 31鉱種の完全な内訳。当時の対象鉱種をすべて列挙した経済産業省の一次資料にあたれていません。「31鉱種47元素」という数値は、産業技術総合研究所が同省資料を出典として示したものに依拠しています。
この記事の出典
官公庁資料2050年カーボンニュートラル社会実現に向けた鉱物資源政策 官公庁資料レアメタル・レアアース(リサイクル優先5鉱種)の現状 官公庁資料日本の新たな国際資源戦略 ③レアメタルを戦略的に確保するために 官公庁資料世界の産業を支える鉱物資源について知ろう 公的研究機関都市鉱山から回収が期待される金属 ~戦略メタルの選定~本記事は2026年9月12日時点で確認できた公表資料にもとづいています。レアメタルの対象鉱種は政策判断によって見直される性質のものであり、今後変更される可能性があります。本サイトの記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨・勧誘するものではありません。
