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F-35戦闘機に使われるレアアースは約417kg
数字の出どころと、納入が止まった日

「F-35戦闘機1機に、約417kgのレアアースが使われている」。レアアースと安全保障を論じる記事で、この数字は繰り返し引用されてきた。では、この数字はどこから来たのか。そして戦闘機は、なぜレアアースを必要とするのか。2022年には、部品に使われた磁石の材料が中国産だったことが判明し、F-35の納入が1か月以上止まる事態も起きている。本記事では、米議会と政府機関の資料をもとに整理する。

この記事の出典レベルについて

2022年の納入停止に関する経緯(停止日、部品の内容、下請けの階層、適用除外の署名日)は、ロッキード・マーティンおよび米国防総省の広報担当者の説明を報じた防衛系メディアの記録に依拠している。当サイトは、これらを文書として公表した一次資料に到達できていない。一方、同種の問題が繰り返し起きていたことは、米政府監査院(GAO)の報告書で確認できる。本文中で、どちらに依拠しているかを明示している。

F-35 1機に約417kg。この数字はどこから来たのか

よく引用される「920ポンド(約417kg)」という数字の出どころは、米議会調査局(CRS)の報告書「Rare Earth Elements in National Defense」である。ただし、CRSがこの数字を独自に算出したわけではない。報告書が引用しているのは、2012年度国防授権法に添えられた米下院軍事委員会の報告書(112-329)だ。

そこには、主要な装備1つあたりに必要となるレアアース材料の量として、次の数字が示されている。

米下院軍事委員会の報告書が示した必要量

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装備1機・1隻あたり換算
F-35 ライトニングII(戦闘機)約920ポンド約417kg
DDG-51 イージス駆逐艦約5,200ポンド約2,360kg
SSN-774 バージニア級潜水艦約9,200ポンド約4,170kg

出典:米議会調査局報告書 R41744(2013年9月17日版)が引用する、下院軍事委員会報告書112-329。換算は当サイトによる。

注意したいのは、この数字が2011年から2012年ごろの見積もりだという点である。装備の設計も、使われる磁石の技術も、その後変わっている可能性がある。現在のF-35に同じ量が使われていると確認できる資料は、公表されていない。

同じ委員会報告書は、国防総省がレアアースの調達について、供給先の多様化、代替材料の追求、廃棄物からの再生という3つの柱で対応する方針だと記している。そのうえで、多様化の取り組みが技術的に難しかったり、費用がかかりすぎたりする可能性への懸念も示していた。

戦闘機のどこにレアアースが使われるのか

用途を公的な資料で確認できるのは、主に磁石である。

米国防総省が2019年に定めた調達規則(DFARS)の説明資料には、レアアース磁石について次のように書かれている。非常に強い磁力を持ち、高温でも磁力を失いにくいという特性があること。航空機の電気系統は、電力を生み出すためにサマリウム・コバルト磁石を使っていること。航空機は、飛行中に各部の動翼を制御するため、小型で高出力のレアアース磁石を用いたアクチュエーターを使っていること。そして、代替材料を使える用途もあるが、たいていは同等の性能に届かないこと。

ネオジム磁石が高温で磁力を落としやすいのに対し、サマリウム・コバルト磁石はもともと熱に強い。エンジン周辺のような高温部で使われるのは、この性質による。

同じ資料は、レアアースの鉱床自体は地理的に分散している一方、金属や最終材料まで加工する能力は主に中国に限られているとも記している。2019年の時点で、米国防総省がこの構造を規則の根拠として明記していたことになる。

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2022年、F-35の納入が止まった

2022年8月31日、米国防総省はF-35の受け入れを一時停止した。理由は、性能でも安全でもなく、1つの磁石の材料の産地だった。

報道によれば、経緯は次のとおりである。ハネウェル製の「ターボマシン」と呼ばれる部品に使われている磁石に、中国で製造されたサマリウム・コバルト合金が使われていたことが判明した。ターボマシンは、エンジンの始動や地上整備のための電力を供給する装置である。合金の磁化は米国内で行われていた。

この合金を供給していたのは、ロッキード・マーティンから見て5次下請けにあたる企業だった。ハネウェルは、潤滑ポンプの供給元から、そのまた供給元が中国産の合金を磁石に使っていたと知らされたという。米国防契約管理庁が8月19日に問題を通知し、8月31日に受け入れが止まった。

停止の根拠は、特定の国で生産された特殊金属の使用を禁じる米国の法律と国防調達規則である。対象国は中国、イラン、北朝鮮、ロシアとされている。

国防総省とロッキード・マーティンは、この磁石が情報を送信することはなく、機体の安全性や機密にも影響しないと説明した。すでに引き渡された機体の磁石を交換することもしないとされた。そして2022年10月8日、取得・維持担当の国防次官が国家安全保障上の適用除外に署名し、納入が再開された。停止の間に、18機の引き渡しが滞っていた。

問題は、この一件で終わらなかった。GAOが2025年に公表した報告書によれば、ロッキード・マーティンは2023年と2024年にも、F-35の供給網で禁止対象の中国製磁石を特定し、国防総省に自己申告している。国防総省は代替の供給元を探すため数か月にわたり製造を停止し、国家安全保障上の適用除外を2件発行した。GAOは、ロッキード・マーティン自身の申告がなければ、国防総省は磁石が中国製であることを知り得なかった可能性があると指摘している。

サマリウム・コバルト磁石をめぐる適用除外は、以前からあった。GAOの2014年の報告書によれば、2009年に特殊金属の規制が変わって以降、国防総省が5つの装備計画に対して6件の国家安全保障上の適用除外を認めており、そのうち5件がサマリウム・コバルト磁石に関するものだった。

2025年の輸出規制と、サマリウム

2025年4月、中国はサマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムの7種のレアアース関連品目について、輸出に政府の許可を必要とする管理対象とした。

この7種の先頭にサマリウムが入っている。航空機の電気系統や、高温で使われる磁石に必要な元素である。ジェトロの分析も、サマリウム、ジスプロシウム、テルビウムの3つが永久磁石の製造に使われるため、特に大きな影響を受けたとしている。

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米国はどう手当てしようとしているか

米国の対応は、大きく2つに分かれる。1つは規制で縛ること。もう1つは、国内に供給網を作ることである。

規制の側では、2019年の調達規則でサマリウム・コバルト磁石やネオジム磁石について、対象国での溶解・生産を制限してきた。GAOによれば、その後も議会は国防授権法を通じて要件を繰り返し強化している。

供給網の側では、国防総省が米国のレアアース企業MP Materialsと官民連携を進めている。同社が2025年7月にAppleとの契約を発表した際も、テキサス州の磁石工場の拡張が国防総省との官民連携の方針に沿うものだと説明していた。この工場は、iPhoneの磁石に使われるリサイクルのレアアースを供給する拠点でもある。軍需と民生が、同じ工場と同じ元素を取り合う構図になっている。

ただし、GAOは2025年の報告書で、国防総省が依然として海外や単一の供給元に強く依存している状況を指摘している。2023会計年度に不足が確認された99の材料のうち、半数以上で国内の製造業者が存在しなかったという。

この記事で確認できなかったこと

以下は、公表資料で裏づけが取れなかった事項である。編集方針として、確認できたことと確認できなかったことを区別して記録している。

【依拠した資料】米議会調査局報告書R41744(2013年9月17日版)/米政府監査院報告書 GAO-25-107283、GAO-15-133/米連邦官報 DFARS Case 2018-D054(2019年4月30日)/Defense News、Breaking Defense、Air & Space Forces Magazineの各報道(2022年9月〜10月)/ジェトロ地域・分析レポート/MP Materials Corp. プレスリリース(2025年7月15日)。いずれも2026年9月閲覧。

本記事は公表資料および報道記録にもとづく記録であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。

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