Asiatoproレアアース専門メディア
お知らせ南鳥島レアアース泥、2027年2月の採鉱試験に向けた最新状況を更新しました →

実はiPhoneのレアアースはリサイクルだった
Appleが「全磁石で100%」に切り替えた仕組み

いま手元にあるiPhoneの磁石には、リサイクルされたレアアースが使われている。Appleは2026年4月、2025年に出荷した製品の全磁石で、100%リサイクルのレアアースを使うようになったと発表した。始まりは2019年のiPhone 11だった。本記事では、iPhoneのどこにレアアースが使われているのか、Appleがどう切り替えてきたのか、そして米国のレアアース企業MP Materialsとの5億ドル契約までを、Appleと関係企業の公表資料にもとづいて整理する。

iPhoneのどこにレアアースが使われているのか

スマートフォンの中でレアアースが最も多く使われているのは、磁石である。Apple自身も、同社製品におけるレアアースの用途として磁石が圧倒的に大きいと説明している。

Appleが公表資料で例に挙げているのがTaptic Engineだ。画面を押したときや通知のときに、指先に「コツッ」という振動を返す部品である。この振動を生む仕組みに、レアアースを使った強力な磁石が組み込まれている。

レアアースを使う磁石の代表がネオジム磁石だ。小さくても磁力が強いため、薄く軽い製品に向いている。Appleは2023年の発表で、テルビウム、ジスプロシウム、ネオジム・プラセオジム合金の写真を掲載していた。いずれもネオジム磁石に関わる元素である。

基礎・技術解説最強磁石の主役「ネオジム(Nd)」とは?佐川眞人氏が起こした素材革命とEV時代の重要性iPhoneにも使われるネオジム磁石が、日本でどう生まれ、なぜ現代の製品に欠かせないのかを解説している。

一方で、iPhone 1台にどのくらいのレアアースが使われているのか、Taptic Engine以外にどの部品の磁石が含まれるのかについて、部品ごとの内訳はAppleの公表資料で確認できなかった。

Appleは「全磁石で100%リサイクル」と発表している

Appleは2026年4月16日、年次の環境報告書にあわせて、2025年の実績を発表した。その中で、同社製品のすべての磁石に100%リサイクルのレアアースを使っていると明記している。

対象は「磁石に使うレアアース」である。ただしAppleは、磁石が同社製品におけるレアアースの用途の中で圧倒的に大きいとしている。そのため、iPhoneに使われるレアアースのほとんどがリサイクル材に切り替わったと読むことができる。

発表には注記がある。修理・交換用に確保している在庫や、年末までに購入済みで消費中の在庫は対象外で、それらは全材料使用量の0.1%未満だとしている。

この目標は、2023年4月に掲げられたものだった。Appleは当時、2025年までにApple製品の磁石で使うレアアースを100%リサイクル材にすると発表していた。2025年4月の発表では99%を超えたと報告し、翌年に100%に到達したことになる。

PR

レアアース関連銘柄ハンドブック、無料配布中

無料で受け取る →

始まりはiPhone 11のTaptic Engine

Appleがリサイクルのレアアースを初めて使ったのは、2019年に発売したiPhone 11のTaptic Engineだった。同社は2023年の発表で、ここを出発点として、その後さまざまな製品へ広げてきたと説明している。

その後の推移を、Appleの発表から並べると次のようになる。

Appleのリサイクルレアアース使用の推移

← 横にスクロールできます →

時期内容
2019年iPhone 11のTaptic Engineで、リサイクルのレアアースを初めて採用
2021年製品に使うレアアース全体のうち、リサイクル材は45%
2022年同73%に拡大
2023年4月最新のiPhone、iPad、Apple Watch、MacBook、Macの全磁石で採用済みと説明。「2025年までに全磁石で100%」の目標を発表
2024年全磁石で99%超(2025年4月発表)
2025年全磁石で100%(2026年4月発表)

出典:Apple Newsroom(2023年4月13日、2025年4月16日、2026年4月16日)。2021年・2022年の数値は、製品に使うレアアース全体に占める割合。

2021年から2022年の1年で、45%から73%へと大きく伸びている。2023年4月の時点で、最新機種の磁石はすでにリサイクル材に切り替わっていた。100%に届いていなかった残りがどの製品だったのか、製品別の内訳は公表されていない。

リサイクルのレアアースはどこから来るのか

リサイクルのレアアースには、大きく2つの出どころがある。一つは、磁石を製造する工場で出る端材や不良品。もう一つは、使い終わった製品から取り出した磁石だ。後で触れるMP Materialsとの契約でも、原料はこの両方から調達するとされている。

使用済み製品からの回収について、Appleは解体ロボットを自社で開発してきた。米業界紙Resource Recyclingは2020年7月、AppleがDaveというロボットを発表したと報じている。DaveはiPhoneからTaptic Engineを取り出して分解し、レアアース磁石やタングステン、鉄を回収しやすくするためのロボットだ。iPhone全体を分解するロボットDaisyの後工程を担う位置づけとされる。

2026年4月の発表では、カリフォルニアの施設で新しいリサイクルラインCoraを稼働させたことも明らかにしている。精密な破砕とセンサーによる選別で、業界の標準よりも高い回収率を実現するとしている。

ただし、Appleが使っているリサイクルレアアースのうち、工場の端材由来と使用済み製品由来がそれぞれどれくらいの割合なのかは公表されていない。解体ロボットで回収した磁石が、どの程度そのまま新しい製品の原料に戻っているのかも、公表資料では確認できなかった。

米MP Materialsとの5億ドル契約

2025年7月15日、Appleは米国のレアアース企業MP Materialsと、5億ドル規模の長期契約を結んだと発表した。Appleは同社を、米国で唯一の一貫生産型レアアース企業と紹介している。

MP Materialsの発表によれば、契約の中身は次のとおりである。

両社は、この契約の前に5年近くにわたって、リサイクル磁石をAppleの性能基準に合う材料へ加工する技術を試してきたという。MP Materialsは、フォートワース工場の拡張を米国防総省との官民連携の方針にも沿うものとしている。

ここで時期に注目したい。Appleが全磁石で100%リサイクルに到達したのは2025年だが、MP Materialsからの出荷開始は2027年の見込みである。つまり2025年時点の100%は、少なくともこの契約にもとづく本格的な出荷とは別の供給で成り立っている。

リサイクルなら中国に頼らなくて済むのか

リサイクル材を使えば、鉱山から新しくレアアースを掘る必要は減る。しかし、それだけで中国への依存がなくなるわけではない。

回収した磁石を再び製品に使うには、レアアースを分離・精製し、磁石として作り直す工程が要る。そして世界のレアアースの分離・精製と磁石製造は、中国に大きく集中している。リサイクル材であっても、その加工がどこで行われているかによって、供給網の実態は変わる。

産業構造・技術動向中国はなぜレアアースの分離を握れたのか|技術・制度・コストの三層掘ることより難しい「分離」の工程を、なぜ中国が押さえることになったのかを整理している。

Appleは、2025年時点でリサイクル磁石の分離・精製や製造がどの国で行われているかを公表していない。一方でMP Materialsとの契約は、原料の処理から磁石の製造までを米国内で完結させる計画である。Appleはこの契約を、米国内でのレアアース供給の確保につながるものと位置づけている。

日本でも、使用済み製品からレアアースを回収する取り組みは進められている。国が優先して回収を進める鉱種や、事業化の状況についてはレアアースの都市鉱山とは|国が選んだ優先5鉱種と、事業化されたもの・されていないもので扱っている。

この記事で確認できなかったこと

以下は、公表資料で裏づけが取れなかった事項である。編集方針として、確認できたことと確認できなかったことを区別して記録している。

【依拠した資料】Apple Inc. Newsroom(2023年4月13日、2025年4月16日、2025年7月15日、2026年4月16日の各発表)/MP Materials Corp. プレスリリース(2025年7月15日)/Resource Recycling報道(2020年7月23日)。いずれも2026年9月閲覧。

本記事は公表資料および報道記録にもとづく記録であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。

Asiatopro 無料配布中

レアアース関連銘柄ハンドブック(全14ページ・無料)

南鳥島レアアース泥プロジェクトを軸に、採掘・精製・磁石加工・リサイクル・調達まで、日本の主要16銘柄を一冊で俯瞰できるPDFです。

表紙
表紙
サプライチェーン全体マップ
サプライチェーン全体マップ
企業プロファイル集
企業プロファイル集

← 中身を少しだけ公開しています

無料で受け取る →

メールアドレスの入力のみ/いつでも配信解除できます

レアアース専門メディア「Asiatopro」が、各社の決算短信・IR資料・官公庁の公表資料のみをもとに、煽らず事実だけを積み上げて作成しました。

関連記事

産業構造・技術動向 トヨタのハイブリッド車とレアアース
産業構造・技術動向 レアアースの都市鉱山とは
産業構造・技術動向 加藤泰浩
産業構造・技術動向 風力発電とレアアース

カテゴリから探す

基礎・技術解説 6 最新動向・時事 8 産業構造・技術動向 15 市場・投資 3 企業分析 19

最新記事

最新動向・時事 F-35戦闘機に使われるレアアースは約417kg
産業構造・技術動向 トヨタのハイブリッド車とレアアース
産業構造・技術動向 レアアースの都市鉱山とは
最新動向・時事 中国のレアアース輸出規制はいま何が有効か

記事一覧をすべて見る →