【2026年8月更新】南鳥島レアアース泥とは?採掘スケジュール・仕組み・2027年2月の本格採鉱試験までを徹底解説
日本の排他的経済水域(EEZ)内、南鳥島沖の水深約6,000mの海底に、世界のレアアース供給構造を塗り替えるかもしれない「泥」が眠っています。それが南鳥島レアアース泥です。2026年2月に採鉱システムの接続試験が成功し、2027年2月には1日あたり350トン規模の本格採鉱試験が予定されています。本記事では、このプロジェクトの基本情報から採掘の仕組み、商業化までのロードマップを解説します。最新の動きに合わせて随時更新していきます。
更新履歴
- 2026年8月30日:記事構造を刷新。関連企業の項を、公表資料で確認できる範囲の記述に改めた
- 2026年8月28日:発見の経緯・資源量・粒径分離技術のセクションを追加
- 2026年8月18日:記事公開
南鳥島レアアース泥とは?
発見の場所と特徴
- 東京都小笠原村・南鳥島沖の排他的経済水域(EEZ)内、水深約6,000mの海底に堆積
- 産業利用可能な規模でレアアース(希土類)を高濃度に含んでいることが確認されている
- 放射性元素をほぼ含まないクリーンな資源とされ、精製の負担が比較的軽い点も注目されている
発見の経緯——2012年、東京大学の加藤泰浩教授ら
この資源の存在を突き止めたのは、東京大学大学院工学系研究科の加藤泰浩教授らの研究グループです。南鳥島は約1億2,000万年前にタヒチ沖で誕生し、プレートに乗って現在の位置まで移動してきました。加藤教授は、その道中でレアアース泥が堆積した海域を通過してきたはずだと予想し、調査を実施。2012年、南鳥島のEEZ内に高濃度のレアアース泥が大量に存在することを発見しました。
2013年には、南鳥島南方で採取されたコア試料の海底下3m付近に、6,600ppmに達する超高濃度のレアアース泥があることが確認されました。JAMSTECの解説によれば、この泥は重レアアース(ジスプロシウムなど)の濃度が、陸上で高品位とされる鉱床の約20倍にあたります。なお、2013年に確認された最高品位については、公表資料に6,500ppm超・6,600ppm・7,000ppmという複数の記述があります(加藤泰浩教授の15年で整理しています)。
資源量はどれくらいか
2018年4月、早稲田大学の高谷雄太郎講師と東京大学の加藤泰浩教授らの研究チームが、南鳥島南部の約2,500平方キロメートルの海域について、レアアース泥の資源分布を初めて可視化することに成功したと発表しました。日本近海でレアアースの詳細な資源量が明らかになったのは、これが初めてです。
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| 対象エリア | 資源量と内訳 |
|---|---|
| 有望エリア全域 (約2,500km²) | レアアース酸化物換算で1,600万トン超。世界需要の数百年分に相当 |
| 特に濃度の高い一角 (北西部・約105km²) | 約120万トン。ジスプロシウム57年分、テルビウム32年分、ユウロピウム47年分、イットリウム62年分(いずれも当時の世界消費量ベース) |
※ 数値は2018年4月10日発表時点のものです。「数百年分」という表現は有望エリア全域を対象とした試算で、報道では2,500km²全域についてジスプロシウム730年分、イットリウム780年分という数字も伝えられています。算定範囲によって年数が大きく変わる点にご注意ください。
なぜ「ゲームチェンジャー」と呼ばれるのか
世界のレアアース生産の約7割は中国が占め、中国はこの供給力を外交カードとして活用する動きを強めています。日本も調達の6割超を中国に依存している状況です。南鳥島レアアース泥は、この構造から脱却しうる国産資源として、経済安全保障の観点から国家プロジェクトに位置づけられています。
中国依存の現状(目安)
- 世界のレアアース生産:中国が約7割
- 日本の調達:中国依存度は6割超
採掘・商業化までのロードマップ
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| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2025年12月 | 内閣府・JAMSTECが、2026年1〜2月に採鉱システムの接続試験を実施すると発表 |
| 2026年1月11日〜2月14日 | JAMSTECが南鳥島EEZ海域で採鉱システム接続試験を実施(発表された予定期間)。「ちきゅう」は1月17日に現場海域へ到着 |
| 2026年2月 | 水深約6,000mからの泥の試験採取に成功(採鉱システム接続試験) |
| 2026年7月 | 採取した泥(約50トン)の成分分析結果を公表 |
| 2027年2月 | 1日あたり350トン規模の本格採鉱試験を実施予定(南鳥島に陸上脱水施設を建設) |
| 2028年度以降 | 試験結果をもとに産業化・商業化を検討 |
※ 日程は計画段階のものを含みます。最新の公式発表をご確認ください。
JAMSTEC(海洋研究開発機構)は2026年2月の接続試験について、これまでの技術開発と運用ノウハウを積み重ねた上での取り組みであり、2027年2月の本格的な採鉱試験に向けた第一歩になるとしています。
東京大学エネルギー・資源フロンティアセンターの研究者からは、既存の海底石油・海洋浚渫技術を応用することで、最短5年程度での商業開発開始を目指すとの見方も示されています。
政府側のロードマップと、2027年2月の試験で何が問われるのかは別記事で詳しく整理しています。
採掘の仕組み
海上作業:「ちきゅう」による揚泥
地球深部探査船「ちきゅう」から水深約6,000mの海底へ管を伸ばし、先端に取り付けたプロペラ付きの採掘装置で泥と海水をかき混ぜて液状化し、船上へ吸い上げます。
粒径分離という発想の転換
引き揚げた泥の大部分は、レアアースをほとんど含まない粘土鉱物です。そのまま全量を運ぶと輸送コストが膨らみます。
そこで研究チームが着目したのが、レアアースが生物の歯や骨に由来するリン酸カルシウム粒子に濃集しているという性質でした。遠心力を利用して粒径ごとに分離したところ、レアアース濃度を2.6倍に高めることに成功しています。
採掘そのものよりも、こうした「運ぶ量を減らす技術」が経済性を大きく左右します。レアアースの本当のボトルネックは精製にあるという構造は、深海資源でも変わりません。
陸上工場:脱水・精製
船上で回収した泥は、南鳥島に建設予定の施設でフィルタープレスなどによる脱水・減容化処理が行われます。その後、持ち帰った泥からレアアースを精製する技術検証が進められる計画です。
なぜ重要なのか
- 経済安全保障:レアアースの供給を特定国に依存しない体制づくりに直結する
- 含有元素:イットリウム(採取分の約3割を占める)、ガドリニウム、ジスプロシウムなどを含み、これらは2025年4月に中国が輸出管理を強化した重希土類とも重複する
- 国際連携:2025年10月には日米間でレアアースを含む重要鉱物の供給確保に関する文書が署名されており、開発面での連携も視野に入っている
関連する企業をどう見るか
このプロジェクトは「関連銘柄」という括りで語られやすい分野です。ただし、2027年2月の本格採鉱試験にどの企業がどの役割で参加するのかは、現時点で網羅的には公表されていません。
本サイトでは、企業とプロジェクトの関係を書く際に次の基準を置いています。
- 各社のプレスリリース、決算短信、JAMSTEC・内閣府の公表資料で確認できた事実のみを書く
- 確認できない関与は「公表なし」と明記する。ただしそれは関与の不在を意味しない
- 推測にもとづく役割分担の表は作らない
たとえば東亜建設工業については、2020年にJAMSTECから解泥技術の実証を受託した事実が同社のリリースで確認できます。一方で、2027年2月の試験における同社の役割は公表されていません。同社の個別記事では、その両方をそのまま書いています。
サプライチェーンのどのフェーズに、どんな企業が存在するのかという全体像は企業マップ記事に、各社の財務・事業の詳細は個別の企業分析記事にまとめています。
本サイトの記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨・勧誘するものではありません。
よくある質問
Q. 南鳥島レアアース泥はいつから実用化されますか?
A. 2027年2月に1日350トン規模の本格採鉱試験が予定されており、2028年度以降に産業化が検討されます。専門家からは商業化開始まで最短でも5年程度という見方が示されています。
Q. 南鳥島レアアース泥の何がすごいのですか?
A. 産業利用可能な規模で高濃度にレアアースを含み、放射性元素をほぼ含まないクリーンな資源であること、そして日本のEEZ内にあり中国に依存しない供給源になりうることが評価されています。
Q. どんな元素が含まれていますか?
A. イットリウムを中心に、ガドリニウム、ジスプロシウムなどが確認されています。
Q. プロジェクトの主体はどこですか?
A. 内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)が主導し、海洋研究開発機構(JAMSTEC)が探査船「ちきゅう」を用いて実務を担っています。
- 南鳥島レアアース泥は、中国依存からの脱却を目指す国家プロジェクト
- 2027年2月の本格採鉱試験が、商業化に向けた次の大きな節目
- 今後の発表を受けて、本記事も随時更新していきます
本記事は、内閣府SIP・JAMSTECの公表資料、東京大学および早稲田大学の研究発表(2018年4月10日)、各社のプレスリリースにもとづいて作成しています。
