中国のレアアース輸出規制はいま何が有効か
3本の措置と、2026年11月10日という期限
「中国のレアアース輸出規制」という言葉は、いくつもの措置をひとまとめにして使われています。そのため、どれがいま効いていて、どれが止まっているのかが分かりにくくなっています。
実際には、性格の異なる3本の措置が重なった状態です。そしてそのうち1本は、現在は停止しています。停止の期限は2026年11月10日です。
この記事では、中国商務部の公告と、安全保障貿易情報センター(CISTEC)・ジェトロの公表資料をもとに、いま何が有効で何が止まっているのかを整理します。
いま有効な措置と、停止中の措置
まず全体像です。
3本の措置の現況(2026年9月13日時点)
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| 公布日/公告 | 主な対象 | 現在の状態 |
|---|---|---|
| 2025年4月4日 公告第18号 | 中重希土類7種と関連品目 | 有効 |
| 2025年10月9日 公告第55〜58号・第61号・第62号 | 5元素の追加、生産設備、超硬材料、再輸出規制、技術 | 停止中 (2026年11月10日まで) |
| 2026年1月6日 公告2026年第1号 | 日本向けの両用(デュアルユース)品目 | 有効 |
報道で最も大きく扱われたのは2025年10月の措置ですが、それはいま止まっています。一方、実務への影響が最も大きかったとされる4月の措置は、一度も止まっていません。この二つが逆に理解されている場面をよく見かけます。
2025年4月4日の措置(有効)——実務への影響が最も大きかった
2025年4月4日、中国商務部と海関総署は公告第18号を公布し、中重希土類7種とその関連品目を輸出管理の対象としました。対象元素は次のとおりです。
サマリウム/ガドリニウム/テルビウム/ジスプロシウム/ルテチウム/スカンジウム/イットリウム
このうち産業上の影響が大きいのが、サマリウム、ジスプロシウム、テルビウムです。いずれも永久磁石の製造に使われ、その磁石が自動車、産業機械、電子機器と広い範囲に組み込まれているためです。
ジェトロは、2025年に企業から寄せられた相談や問い合わせの数から判断して、この4月の措置の影響が最も大きかったとしています。対象品目はHSコードベースで97品目にのぼりますが、該非判定においてHSコードはあくまで参考という位置づけのため、実際の対象範囲はさらに広くなり得るとされます。
2025年10月9日の措置と、その停止
2025年10月9日に公布された一連の措置は、それまでで最も広範なものでした。6つの公告から成り、対象は次のように分かれています。
10月9日に公布された6つの公告
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| 公告 | 対象 |
|---|---|
| 第55号 | 超硬材料(人工ダイヤモンド粉、砥石など)と関連装置 |
| 第56号 | レアアース生産設備(遠心抽出機、焼結炉など)、原料・薬剤 |
| 第57号 | 中重希土類5元素(ホルミウム、エルビウム、ツリウム、ユウロピウム、イッテルビウム)の金属・合金・酸化物など |
| 第58号 | 関連品目 |
| 第61号・第62号 | 再輸出規制および技術に関する措置 |
特に注目されたのが再輸出規制です。海外で製造された製品であっても、中国原産のレアアースを一定割合以上含むもの、あるいは中国由来の技術を用いて製造されたものが対象になるという内容で、規制の効力が中国国外のサプライチェーンにまで及ぶ構造でした。
2025年11月7日、公告第70号による一時停止
この6つの公告は、2025年11月7日に公布された商務部・海関総署公告2025年第70号により、実施が停止されました。公告には、承認を経て即日から2026年11月10日まで、第55号・第56号・第57号・第58号および第61号・第62号の実施を一時停止すると記されています。
撤廃ではなく、一時停止です。経済産業省を通じて業界団体に周知された内容でも、今回の措置は約1年間の一時停止であり規制そのものが撤回されたわけではない、として、サプライチェーン上のリスクに引き続き注意するよう呼びかけられています。解説記事のなかには、10月の措置を現在も有効なものとして扱っているものが見られますが、2025年11月7日以降は停止中です。
停止は日本を含む全世界向けに適用されます。米中間の協議を受けた措置とされていますが、効力の範囲は米国向けに限定されていません。
2026年11月10日に何が起きるのか
この記事を公開している2026年9月13日から見て、停止期限は約2か月後です。
そして、その日に何が起きるかは公表されていません。考えられる筋道は複数あります。
- 停止が延長される
- 停止が終了し、6つの公告の効力が復活する
- 内容を変更したうえで、あらためて公布される
公告第70号が定めているのは停止の期限だけで、その後の扱いについては触れていません。現時点で、このうちどれになるかを示す公表資料を確認できていません。
参考になる先例はあります。2025年11月9日、中国政府は2024年から米国向けに輸出を禁止していたガリウム、ゲルマニウム、アンチモンなどについて、その禁止措置を1年間延期すると発表しました。措置の停止や延期が、その時々の交渉状況に応じて判断されてきたことがうかがえます。
いずれにせよ、2026年11月10日は、レアアースのサプライチェーンに関わる立場であれば把握しておくべき日付です。当サイトでも、動きがあった時点で本記事を更新します。
2026年1月6日の対日措置(有効)
2026年1月6日、中国商務部は公告2026年第1号を公布し、日本向けの両用品目について輸出管理を強化しました。即日施行です。
この措置には、それまでの規制と性格が異なる点があります。品目のリストが示されていません。
対象は「日本の軍事ユーザー、軍事用途、および日本の軍事力向上に資するその他の最終ユーザー・用途」と定められており、何が規制されるかは品目ではなく最終用途と最終ユーザーによって決まる構造です。加えて、中国原産の該当品目を第三国の組織や個人が日本へ移転・提供した場合についても責任を追及すると明記されています。
続いて2026年2月24日、公告第11号および第12号により、日本の企業・機関あわせて40団体が輸出管理上のリストに掲載されました。
なぜ「中国の輸出規制」と一言で言えないのか
ここまで見てきたとおり、3本の措置は対象も適用範囲も現況も異なります。
4月の措置は元素を指定するもので、全世界向け、現在も有効。10月の措置は設備や技術、さらには第三国での製造品まで対象に含む広範なもので、全世界向け、現在は停止中。1月の措置は日本のみを対象とし、品目ではなく用途で線を引くもので、現在も有効。
「中国の規制で止まっているかどうか」は、どの措置の話かによって答えが変わります。そのため、ニュースで「中国の輸出規制」という言葉を見たときは、どの公告を指しているのかを確認する必要があります。公告番号が書かれていれば、上の表と照らし合わせることができます。
中国が輸出管理を通じてこれほどの影響力を持つに至った背景については、当サイトの別記事で扱っています。
産業構造・技術動向なぜ日本はレアアースを中国に頼るのか|依存の構造と、脱却に向けた動き埋蔵量ではなく精製工程に依存の本質があること、2010年以降の日本の対応をまとめています。この記事で確認できなかったこと
当サイトでは、裏づけが取れなかった事項を記事の末尾に記しています。
- 2026年11月10日以降の扱い。停止の延長、規制の復活、内容変更のいずれになるかを示す公表資料を確認できていません。
- 2026年1月の対日措置による具体的な影響範囲。品目リストがない構造のため、実際にどの取引が止まったのかを公表資料から特定できていません。
- 2026年2月にリスト掲載された40団体の内訳。公告の存在は複数の資料で確認できましたが、掲載団体の全リストには到達できていません。
この記事の出典
海外政府商務部・海関総署公告2025年第70号(実施の一時停止に関する決定) 業界団体中国によるレアアース関連貨物及び技術の輸出管理規制の強化について 業界団体中国による両用品目・技術輸出入許可証管理リスト(2026年度版)の発表 業界団体中国による輸出規制措置の一時停止について(経済産業省)本記事は2026年9月13日時点で確認できた公表資料にもとづいています。輸出管理措置はその後変更される可能性があり、特に2026年11月10日の停止期限をめぐっては状況が動くことが見込まれます。実務上の該非判定にあたっては、必ず最新の公告原文および専門機関の情報をご確認ください。本サイトの記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨・勧誘するものではありません。
