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お知らせ南鳥島レアアース泥、2027年2月の採鉱試験に向けた最新状況を更新しました →

加藤泰浩
南鳥島レアアース泥を発見した研究者の15年

2027年2月、南鳥島沖で1日約350トン規模のレアアース泥の採鉱試験が予定されている。この計画の出発点には、一本の論文がある。2011年7月、Nature Geoscience誌に発表された論文で、太平洋の深海底にレアアースを高濃度に含む泥が広く分布することを世界で初めて示したものだ。筆頭著者は東京大学の加藤泰浩氏。発見から15年、何が起き、何が残っているのかを公表資料で追う。

地質学者が資源を探していたわけではない

加藤泰浩氏は1961年埼玉県生まれ。1985年に東京大学理学部地学科を卒業し、1990年に同大学院理学系研究科の博士課程を修了して理学博士となった。山口大学理学部助手、ハーバード大学とケンブリッジ大学の客員研究員、東京大学大学院助教授・准教授を経て、2012年から教授を務めている。

専門は地球化学である。堆積物の化学組成から、過去の地球環境の変遷を読み解く分野だ。

重要なのは、レアアース泥の発見が「資源を探した結果」ではなかったという点である。深海掘削計画(DSDP)と国際深海掘削計画(ODP)、そして東京大学海洋研究所が保存していたピストンコアの試料を分析していた過程で、レアアースが異常に濃集した層が見つかった。分析対象は78地点、2,037試料に及んだ。

地球の歴史を読むための分析が、資源の発見につながった。

2011年、Nature Geoscienceの論文

2011年7月、加藤氏らの研究グループは、太平洋の広い範囲にレアアースを高濃度に含む泥(レアアース泥)が存在し、これが新しいレアアース資源となり得ることをNature Geoscience誌に発表した(Kato et al., Nature Geoscience 4, 535-539, 2011)。

時期が重なっていた。2010年に中国が対日レアアース輸出を絞り、価格が急騰した直後である。日本がレアアースの調達先を切実に探していたタイミングで、この論文は国内外で大きな反響を呼んだ。

加藤氏が挙げたレアアース泥の特長は4点だった。

2011年の論文が示したレアアース泥の特長

1. 膨大な資源量をもつこと
2. 層状の遠洋性堆積物として分布しているため、資源探査が容易なこと
3. 中国のイオン吸着型鉱床を超えるレアアース含有量を持ち、特に希少性の高い重レアアース(ジスプロシウム、テルビウムなど)に富むこと
4. 鉱床開発の障害となるトリウムやウランなどの放射性元素をほとんど含まないこと

4番目が重要である。この点については南鳥島のレアアース泥はなぜ放射性物質を含まないのかで詳しく扱っている。中国以外の国で陸上のレアアース鉱床開発が進まなかった最大の理由が、放射性元素の処理コストだった。それを回避できる資源として、レアアース泥は位置づけられた。

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2012年、南鳥島EEZでの確認

2011年の発見は公海の話だった。日本が権利を持つ海域にあるかどうかは、別の問題である。

2012年6月28日、加藤氏らは資源地質学会において、南鳥島周辺の排他的経済水域(EEZ)内および周辺で実施されたODPのコア解析から、この海域の海底にもレアアース泥が分布し、日本の国内資源となる可能性について発表した。

これによって、レアアース泥は学術的な発見から、日本の資源政策の対象へと位置づけを変えた。

2013年、世界最高品位の確認

2013年、JAMSTEC海底資源研究プロジェクトの鈴木勝彦主任研究員らと加藤氏らは、深海調査研究船「かいれい」による同年1月の研究航海で採取した試料を分析した。

南鳥島周辺の水深5,600m〜5,800mの海底から採取された堆積物のコアを調べたところ、南鳥島南方の調査地点において、海底下3m付近に最高6,500ppm(0.65%)を超えるレアアース濃度の層が確認された。東京大学の公表資料では、PC05という試料の海底下3m付近に6,600ppmに達する超高濃度レアアース泥が存在すると記されている。

東京大学の展示解説によれば、2013年にはレアアース品位が7,000ppmに達する世界最高品位の「超高濃度レアアース泥」が発見された。

陸上のレアアース鉱床の品位と比較すると、この数字の意味が見えてくる。中国のイオン吸着型鉱床は総レアアース含有量が0.05〜0.2%程度とされる。南鳥島の超高濃度層はその数倍にあたる。

「南鳥島の光」——泥からLEDまで

加藤氏の取り組みで特筆すべきものに、白色LED「南鳥島の光」がある。

これは、実際に南鳥島海域で採取したレアアース泥から精製したレアアースを用いて製作された、世界で初めて海底鉱物資源から精製されたレアアースによるLEDである。千葉工業大学の東京スカイツリータウンキャンパスに展示されている。

製作の工程は3段階だった。第一に、希釈した塩酸にレアアース泥を浸してレアアースを抽出し、カラム分離によってレアアースの混合物とその他の元素を分ける。第二に、イオン交換によってレアアースを個別に分離し、イットリウムとセリウムを精製する。第三に、精製したイットリウムとセリウムを用いて白色LEDを作成する。

東京都の国境離島に関する公開インタビューで、加藤氏はこの製作の意図を説明している。レアアース泥を深海から採取することさえできれば、その後の製錬など実用化に至るまでの一連の流れは既存技術で構築できる。それを示すために作ったという趣旨である。

17種類のレアアース元素の混合物から各元素を個別に分離する工程は難しい。この工程を日本企業の協力で実現したこと自体が、精製ボトルネックの問題に対する一つの回答になっている。

研究は続いている

加藤氏の研究チームは、発見後も分析を継続している。

2019年の学会発表では、レアアース泥中の粒子の粒径差に着目し、ハイドロサイクロンを用いた粒径分離実験によってレアアース濃度を高める手法が報告されている。海底で選鉱してから引き上げれば、揚泥量を減らせる。開発コストに直結する研究である。

また東京大学の公表情報には「南鳥島沖の『超高濃度レアアース泥』は地球寒冷化で生まれた」という研究成果も掲載されている。なぜその場所にレアアースが濃集したのかという、資源探査の指針にもなる問いである。

加藤氏は現在、東京大学大学院工学系研究科エネルギー・資源フロンティアセンターの教授兼センター長、千葉工業大学次世代海洋資源研究センター所長、JAMSTEC招聘上席研究員を兼務している。第28回「日経地球環境技術賞」の最優秀賞も受賞している。

発見から15年、まだ引き上げられていない

2011年の論文から15年が経過した。この間に確認されたことは多い。資源量、品位、分布、放射性元素の少なさ、精製の可能性。いずれも公表されている。

だが、商業的な採掘はまだ実現していない。

2026年2月には水深6,000m級の海域で全長5,569mの揚泥パイプを用いた採泥に成功しており、技術的な前進はある。2027年2月には1日約350トン規模の本格採鉱試験が予定されている。詳細は南鳥島レアアース泥プロジェクトの全体像で扱っている。

15年という時間をどう見るかは、読む人によって違うだろう。深海6,000mからの資源回収という前例のない事業であることを考えれば妥当な速度とも言えるし、発見から実用化までの距離の遠さを示しているとも言える。

確かなのは、2027年2月の試験が、この15年で初めて「産業として成立するか」を問う場になるということである。

この記事で確認できなかったこと

以下は、公表資料で裏づけが取れなかった事項である。

【依拠した資料】Kato, Y. et al. "Deep-sea mud in the Pacific Ocean as a potential resource for rare-earth elements", Nature Geoscience 4, 535-539(2011年)/東京大学プレスリリース「南鳥島沖で世界最高濃度のレアアース泥を発見」/東京大学 HASEKO-KUMA HALL 展示解説「レアアース泥 REY-Rich Mud」/東京大学「加藤 泰浩」研究者情報ページ/加藤泰浩「レアアース泥——新しい海底鉱物資源」JGL Vol.9 No.2(2013年)/日本学術振興会「南鳥島のレアアース泥が日本を救う」/加藤泰浩ほか「レアアース泥に関する最新研究成果」日本地質学会(2019年)/東京都「日本の最南端・最東端の国境離島」加藤泰浩氏インタビュー/日経サイエンス「レアアースの泥で日本の未来を拓く:加藤泰浩」(2013年11月号)。いずれも2026年9月閲覧。

本記事は公表資料にもとづく記録であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。

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